今読みたいアルゼンチンの現代作家7人
サスペンス、恐怖、古典の語り直しまで。七人の作家と、それぞれの作品世界への入口となる一冊。

21世紀のアルゼンチン文学を一つの作風で語ることはできない。ここに挙げる七人の作品には、日常に潜む恐怖、地方の暮らし、社会の周縁に置かれた人々、国民的な物語の語り直し、予想外の方向へ進む想像力がある。国外にも読者を得た作家たちだが、アルゼンチンについて同じ物語を書いているわけではない。
これは「最高の七人」という順位ではなく、それぞれの作品世界への入口だ。世代も手法も異なる作家を、一人につき一冊を手がかりにたどる。
Samanta Schweblin――会話から広がる不安

『Distancia de rescate』(英語版は Fever Dream)では、地方の診療所にいる病気の女性と少年が言葉を交わす。何が起きたのかをたどる質問の奥で、子どもたちに危険が迫ったのではないかという疑いが強まる。Schweblinは情報を少しずつ明かし、娘を守ろうとする母親の切迫感から緊張を生む。2014年に原著が刊行されたこの小説は、2017年の国際ブッカー賞最終候補に入った。
短く、すべてを説明しきらない物語を読みたい人に向く。次に『Kentukis』(英語版 Little Eyes)を開けば、見知らぬ人を接続機器によって家庭に招き入れる世界が待っている。どちらでも、目に見える怪物以上に人間の選択が不穏だ。
Mariana Enríquez――歴史に隣接する恐怖

『Nuestra parte de noche』(英語版 Our Share of Night)は、軍事独裁期のアルゼンチンを父と息子が旅する場面から始まる。父は、残虐な儀式によって不死を求める一族の組織から息子を遠ざけようとする。超自然的な脅威に、政治的暴力や特権層の力、危うい親子の絆が重なる。
短編から入りたいなら『Los peligros de fumar en la cama』(英語版 The Dangers of Smoking in Bed)がある。英訳は2021年の国際ブッカー賞最終候補となった。Enríquezの幽霊や儀式は単なる飾りではない。見覚えのある場所と社会の緊張が、そのまま悪夢の中へ入り込む。
Claudia Piñeiro――問いが変わっていくミステリー

娘が遺体で見つかり、公的な捜査は終わる。それでも母親は真相を知ろうとする。『Elena sabe』(英語版 Elena Knows)では、パーキンソン病を抱えるエレナにとって街を横断するだけでも身体的な試練となる。謎が物語を進める一方、身近な人をどこまで知っているのか、自分の身体について誰が決めるのかという問いが浮かぶ。
Piñeiroは犯罪小説の仕組みを使いながら、事件の解決だけで終わらせない。英訳は2022年の国際ブッカー賞最終候補となった。家族、宗教、社会の対立をサスペンスから描く作家への、読みやすい入口である。
Selva Almada――川が呼び戻すもの

三人の男が、友人の亡くなった場所へ釣りに戻る。『No es un río』(英語版 Not a River)では、その一日が記憶や長年の結びつきを呼び起こし、島に暮らす人々も巻き込む暴力の気配を生む。Almadaは身ぶりや沈黙に語らせる。川辺は単なる背景ではなく、過去と現在が交差する場所だ。
2024年の国際ブッカー賞最終候補となったこの小説からは、アルゼンチンの地方を描く作家の力が伝わる。登場人物は絵はがきのような「田舎の人々」ではない。男女や家族、隣人の間に愛情も競争もあり、誰も出来事の全体を把握していない。
Gabriela Cabezón Cámara――古典に新しい語り手を

『Las aventuras de la China Iron』(英語版 The Adventures of China Iron)では、アルゼンチンの叙事詩『Martín Fierro』でほとんど声を与えられなかった妻が、割り当てられた役割を離れ、Lizとともにパンパを旅する。彼女の視点で語り直すと、国を形づくる物語で誰が発言でき、どのような自由が見落とされたのかが問われる。
英訳は2020年の国際ブッカー賞最終候補となった。ユーモアと勢いのある言葉が、ジェンダー、土地、国家像の見直しを支える。José Hernándezの原作に戻り、視点の移動が何を変えたかを考えるきっかけにもなる。
César Aira――脱線を追いかける

『El divorcio』(英語版 The Divorce)では、ブエノスアイレスのカフェに座る男性が、自転車に乗る若者をめぐるささいな出来事を目にする。そこから出会いと話が次々につながり、ありふれた午後は奇妙な論理を帯びていく。小さな発端から予想外の場所へ進む、Airaらしい小説だ。
1949年生まれのAiraは、この一覧の何人かより前の世代に属する。それでも今世紀も刊行を続け、作品は各国語に翻訳されている。短い小説を一冊手に取り、唯一の説明を探すより、急な方向転換を楽しみたい。
Camila Sosa Villada――周縁でつくる家族

『Las malas』(英語版 Bad Girls)では、コルドバのサルミエント公園で働くトランス女性たちが、捨てられた赤ん坊を迎え入れる。Encarnaを中心に、暴力にさらされながらも、思いやりや欲望、ユーモアに支えられた、血縁によらない家族が形づくられる。幻想的な出来事は、彼女たちの具体的な生活を消し去らない。
この小説は2020年にソル・フアナ・イネス・デ・ラ・クルス賞を受賞した。Sosa Villadaの言葉は、被害者としてだけ描かれがちな人物たちに、想像力や矛盾、これからの人生を与える。
七つの入口から、その先へ
Schweblinの緊張感からEnríquezの闇へ、Piñeiroの家族への問いからAlmadaの複雑な関係へ、あるいはCabezón Cámaraの旅からAiraとSosa Villadaの大胆な想像力へ。好きな道筋で読み進められる。七冊を結ぶのは統一された「国民的な文体」ではなく、慣れた物語が見落としてきた人生や問いに場所を与える力だ。