金田一が再び、死を告げる唄の村へ NHK『悪魔の手毬唄』がBSで放送
NHK版金田一シリーズ第5弾は、2026年3月にBSプレミアム4Kで前後編を放送済み。吉岡秀隆、宮沢りえが共演する本作が、旧作の再放送に続き、11月28日と12月5日にNHK BSに登場する。

温泉宿、故郷に帰ってきた歌手、そして殺人の筋書きのように響き始めるわらべ唄。横溝正史が生んだ探偵・金田一耕助が挑む『悪魔の手毬唄』の世界だ。NHKはこのドラマを2026年3月14日と21日、BSプレミアム4Kで前後編に分けて放送した。今度はNHK BSで、11月28日と12月5日のいずれも午後9時から放送する。
各89分、全2回の物語は、すでに4Kで初回放送を終えている。NHKの10月27日の発表では、BSでの放送日とともに、金田一作品をたどる再放送も告知された。直前の3週の日曜日には『悪魔が来りて笛を吹く』と『犬神家の一族』の前後編が放送される。死を告げる唄の村を訪ねる前に、このシリーズの歩みを振り返る機会となる。
題名にある「手毬唄」とは、毬をついて遊ぶときに歌う唄のことだ。幼い日の記憶に結びつく、一見無邪気な唄が、この物語では脅威に変わる。殺人が、その歌詞をなぞっていくからだ。
歓迎の空気が呼び覚ます過去
金田一は岡山の鬼首村を訪れ、温泉宿「亀の湯」に滞在する。村には、23年前に起きた殺人事件の記憶が残る。村出身の歌手・別所千恵子の帰郷は、祝うべき出来事に思えた。かつての同級生たちは再会の場を用意する。ところが、その周辺の若い女性たちが次々と命を落としていく。
公式のあらすじが示すのは、過去の因縁、隠された血縁関係、そして復讐心が絡み合う謎だ。唄は、探偵が読み解くべき殺人の型を示す。過去は単なる背景にとどまらず、村の暮らしを今も左右する人間関係を抱え込んでいる。
奥平大兼が演じるのは、宿の女将の長男・青池歌名雄。村の若者たちの中でも中心となる人物だ。吉田美月喜は、帰郷によって物語を動かす千恵子を演じる。両俳優の所属事務所は配役を発表し、金田一ファンにも、この世界に初めて触れる視聴者にも届く作品として紹介した。
探偵役には吉岡秀隆が続投する。宮沢りえが宿の女将・青池リカを、出口夏希が青池里子を演じる。ほかに和田聰宏、奥菜恵、清水美砂、西田尚美、浅野和之、笹野高史、西岡德馬、白石加代子、小市慢太郎が出演する。
受け継がれる探偵像、演じ手が吹き込む新しさ

本作は、NHKが2016年に始めた金田一作品の映像化シリーズの第5弾に当たる。これまでに『獄門島』(2016年)、『悪魔が来りて笛を吹く』(2018年)、『八つ墓村』(2019年)、『犬神家の一族』(2023年)が放送された。それぞれが同じ探偵による独立した事件を描くため、過去4作を見ていなくても『悪魔の手毬唄』から入ることができる。
『獄門島』で金田一を演じたのは長谷川博己だった。吉岡は2018年の作品から役を引き継いでおり、『悪魔の手毬唄』は、このシリーズで金田一を演じる4作目となる。探偵と横溝の原作が作品をつなぐ一方、物語ごとに異なる家族、舞台、容疑者たちが登場する。
NHKが公表したコメントで、吉岡は、毎回力のある共演者たちと向き合うことへの緊張を語っている。宮沢は、子どもの頃から金田一の物語が強く記憶に残っていることを振り返り、吉岡との再共演を喜んだ。その言葉からは、親しまれてきた世界観を受け継ぎながら、新たな登場人物に命を吹き込むという、この企画の難しさがうかがえる。
脚本は『岸辺露伴は動かない』やアニメ『進撃の巨人』などを手がけた小林靖子。演出は前作『犬神家の一族』も担当した吉田照幸が務める。脚本家、演出家、主演俳優の顔合わせは、2023年の作品の中核を担ったチームを引き継ぐ。
世代を超えて親しまれる探偵
金田一には、読者と視聴者の世代をまたぐ歴史がある。出版社のPushkin Pressは、金田一が横溝の70編を超える作品に登場し、その多くが舞台やテレビに翻案されてきたと紹介している。小説『悪魔の手毬唄』は、英語では『The Little Sparrow Murders』の題で刊行されている。今回の放送も、さまざまな俳優が演じ、事件が繰り返し読み直されてきた探偵の長い歩みに連なる。
反響を示す具体例の一つが、2023年版『犬神家の一族』だ。スポニチは、前編の放送後、作品のハッシュタグが日本のTwitterトレンドで1位になったと報じた。これは当時の作品が生んだ話題の広がりを示すもので、2026年版の視聴率を表す数字ではない。
作品と土地との結びつきも深い。岡山のフィルムコミッションは、『悪魔の手毬唄』のロケ地として岡山、倉敷、高梁、美作、井原、矢掛、美咲を挙げている。旧吹屋小学校、広兼邸、西大寺の歴史ある街並みなどが含まれる。架空の村は、横溝の物語世界と縁の深い地域の、実在する場所を組み合わせて形づくられている。
放送予定と過去作を見る方法
BSプレミアム4Kでの3月14日、21日の放送を経て、NHKが発表した2026年11月、12月の予定は以下の通り。時刻はいずれも日本時間で、すべてNHK BSで放送される。
- 11月8日 午後1時〜2時59分:『悪魔が来りて笛を吹く』再放送。
- 11月15日 午後1時〜2時29分:『犬神家の一族』前編の再放送。
- 11月22日 午後1時〜2時29分:『犬神家の一族』後編の再放送。
- 11月28日 午後9時〜10時29分:『悪魔の手毬唄』前編。
- 12月5日 午後9時〜10時29分:『悪魔の手毬唄』後編。
今回の『悪魔の手毬唄』を見られる機会として、確定しているのは衛星放送だ。NHKの発表には、動画配信の開始日は示されていない。
過去4作については、NHKオンデマンドの公式作品ページや、U-NEXTの「金田一耕助シリーズ」に『獄門島』『悪魔が来りて笛を吹く』『八つ墓村』『犬神家の一族』が掲載されている。NHKオンデマンドは日本国内向けの有料サービスで、海外からの視聴には対応していない。申し込む前に、それぞれの作品ページで配信状況と利用条件を確認したい。
探すときは、制作年と主演俳優を手がかりにすると分かりやすい。同じ題名で、異なる時代の映画やドラマが存在するためだ。配信一覧に『悪魔の手毬唄』があっても、吉岡と宮沢が出演する今回のNHK版とは限らない。放送は、親しまれてきた謎に再び触れる機会となる。その一作にたどり着くには、幾度も映像化されてきた作品の中から、見たい版を確かめる必要がある。
