米社会保障給付、2027年は3.6%増 年金受給者の増額と支給時期は
米国の物価調整により、退職者の平均月額給付は2,095ドルから2,170ドルへ。実際の受取額は個人の給付額や控除によって異なる。

米国の社会保障給付が2027年に3.6%引き上げられる。米社会保障局(SSA)は10月14日、生活費の上昇に応じた年次調整「COLA」を発表した。退職者向け給付の平均増額は月約75ドルで、1月分から反映される。障害者や遺族など、制度が保護する他の受給者も対象となる。
家計の負担が重いなかでの増額だが、一時金でも、全員に同じ金額を上乗せする措置でもない。それぞれの給付額に所定の率を適用する。受給者にとって大切なのは、控除後に口座へ入る金額がどれだけ増え、日々の支出をどこまで賄えるかだ。
平均月額は2,095ドルから2,170ドルへ
SSAの資料によると、退職した労働者の平均月額給付は2,095ドルから2,170ドルに増える。夫婦ともに給付を受ける高齢世帯では、合計の平均月額が3,238ドルから3,355ドルになる。これらは制度全体の平均であり、各世帯の支給額を決めるものではない。
同じ3.6%でも、増えるドル額は元の給付額によって違う。計算上の例では、月2,000ドルなら控除前で72ドル、1,500ドルなら54ドル増える。これは仕組みを示す仮の計算で、実在の受給者の事例でも、銀行口座への振込額の予測でもない。
SSAによれば、約7,200万人の社会保障受給者に1月から調整が反映される。対象は退職者だけではない。障害給付や遺族給付も含まれ、障害のある労働者の平均月額給付は1,642ドルから1,701ドルへ増える見込みだ。
SSIの増額支給は12月31日から
補足的保障所得(SSI)の増額分は、2026年12月31日から支給される。SSIは社会保障の拠出型給付とは条件が異なり、年齢や障害に関する要件に加え、所得・資産などの条件を満たす人を支援する制度だ。
2027年の連邦基準月額は単身者が1,029ドル、夫婦が1,544ドルとなる。2026年の994ドル、1,491ドルからの引き上げだ。ただし、この基準額がすべての申請者にそのまま支給されるわけではない。受給者の所得や個別の事情が給付額に影響する。
SSIの増額を受けるのは約730万人で、一部は社会保障給付も受けている。そのため、約7,200万人と約730万人を単純に足して別々の人数とみなすと、重複して数えることになる。SSAは、両制度を合わせた対象者を約7,600万人としている。
物価調整率とニュースのインフレ率が違う理由
COLAは、米労働統計局が公表する都市部の賃金労働者・事務職員向け消費者物価指数「CPI-W」に連動する法定の計算で決まる。2027年の調整では、2026年7~9月期の平均を前年同期の平均と比較する。9月単月の物価上昇率だけを使うわけではない。
ニュースで一般に取り上げられるインフレ率と、COLAの算定に用いる指標は置き換えられない。対象となる世帯や比較期間が異なる場合がある。今回の3.6%は法律上の算定方法による結果であり、受給者一人ひとりの生活費上昇率を新たに測った数字ではない。
また、全員の購買力が失われた分だけ正確に回復するとは限らない。医薬品、家賃、エネルギーなどへの支出割合が高い世帯では、平均的な消費の組み合わせとは違う負担が生じうる。名目上の収入は増えるが、暮らしの余裕がどれだけ変わるかは、支出側の価格にも左右される。
実際の受取額は個別通知で確認
SSAによると、個人向けの「my Social Security」アカウントでは11月下旬から通知を確認できる。オンラインでの確認を希望し、まだ登録していない人は、11月18日までにアカウントを作成し、紙を使わない通知を選択する必要がある。その方式を利用しない受給者には、12月中に郵送で通知される。
簡略化された1ページの通知には、個人の新しい給付額、控除額、関連する日付が記載される。米国の公的医療保険メディケアに加入している場合は、給付から差し引かれる保険料も手取りに影響する。SSAの発表は、2027年のメディケアに関する情報を同制度の案内で確認するよう求めており、社会保障の増額率だけで振込額の変化は判断できない。
働き続ける人に関係する年次改定もある。社会保障税がかかる年間所得の上限は、2027年に18万4,500ドルから19万2,300ドルへ上がる。この上限は社会保障税の部分についてのもので、メディケア税全体に共通する所得上限ではない。
今回の発表は翌年の家計を考える出発点になる。ただ、実際に予算を組むうえで重要なのは個別の通知だ。増額と控除を照らし合わせ、生活費と比較できるからである。平均で月75ドルという数字を参考にしつつ、自分の給付がどれだけ変わるかを確かめる必要がある。