在沖縄米軍嘉手納基地、BYD車の乗り入れを安全保障上の懸念で禁止
自家用車だけでなくタクシーや配送車も対象。米軍は危険性を指摘する一方、特定車両による情報活動の証拠は公表していない。

沖縄県にある米軍嘉手納基地に、中国の自動車メーカーBYDの車両が入れなくなった。自家用の電気自動車だけでなく、タクシーや配送車も対象となる。米空軍第18航空団は、安全保障上の懸念を理由とする規制が10月26日から適用されたと確認した。携帯電話や通信機器で語られてきた問題が、日常の移動手段にも及んだ。軍事施設の近くを走る通信機能付きの車は、どのような情報を集め得るのか。
日本と海外の報道機関が引用した米軍報道官は、BYD車が基地の隊員と任務にとって受け入れがたいリスクをもたらすと説明した。これは米軍による危険性の評価であって、特定の車両がスパイ活動をしたという公開された証拠ではない。禁止のきっかけとなる具体的な事件も明らかにされていない。また、日本国内の一般道路でBYD車の走行を広く禁止する措置が発表されたわけではない。公表されている対象は嘉手納基地への立ち入りだ。
タクシーや配送にも及ぶ制限
規制は個人所有の車のほか、請負業者、タクシー、配送業者が基地に乗り入れる車両にも適用される。ゲートでは対象車を通さない運用となる。基地向けの仕事をする沖縄の運転手にとっては、抽象的な技術政策では済まない。別の車に替えるか、荷物の受け渡しを基地の外で手配する必要がある。影響を受ける運転手や利用者の人数は、現在の情報からは分からない。
嘉手納は東アジアにおける米軍の主要な航空拠点の一つだ。沖縄という位置に加え、監視、航空支援、地域の危機への対応を担うことが、基地内に入る機器や車両を厳しく管理する背景にある。現代の車には、カメラ、マイク、ナビゲーション、遠隔更新できるソフトウエアなどが搭載される。運転者に便利な機能だが、走行経路や周囲の映像などの情報も生み出す。こうしたデータに不適切な形でアクセスされる可能性が、軍側の説明する一般的な懸念だ。
ただし、車が集める情報が必ず外国政府に届くという意味ではない。具体的な情報の移転を証明するには技術的な証拠が必要だが、今回、当局はそのような証拠を公開していない。措置は機密性の高い施設での予防的な危険評価とみられる。潜在的な弱点を警戒することと、情報活動が実際に行われたと確認することは別だ。
時事通信や共同通信などの日本の報道機関は、10月26日に第18航空団の確認を伝えた。英国の報道によれば、対象は個人用の電気自動車に限らず、BYD製の全車種に及ぶ。入手できる報道では、BYDから直ちに公の反応は出ていなかった。同社または米国防総省から詳しい技術的な説明がない以上、どの部品や機能が禁止の直接の理由になったかは特定できない。
中国製技術と米軍の警戒
米政府は軍の施設で一部の中国製機器の利用を制限してきた。2018年には安全保障上の懸念から、基地での華為技術(ファーウェイ)とZTEの携帯電話の販売・使用を禁止した。2026年6月には、国防総省が中国軍との関係があると評価する企業の一覧にBYDを加えた。中国政府はこの種の指定に繰り返し反発している。嘉手納の規制もこうした政策の流れの中にあるが、今回公表された適用範囲は基地への入場に限られる。
携帯電話と車を同じものとして扱うこともできない。電話は人とともに移動し通信内容を保存する一方、車は立ち入りが制限される道を走り、施設の画像や位置情報を記録し得る。ただし、通信機能を備えた車はBYD以外にも多い。議論はメーカーの国籍だけでは終わらない。どんなデータを取得でき、誰が閲覧できるのか、機密施設への立ち入りにはどのような管理が必要なのかが問われる。
日本にあるほかの米軍基地も同様の措置を取るとの確認はない。報道で拡大の可能性が論じられていても、発表済みの決定ではない。仮に広がれば、メーカーや働く人、訪問者への影響はさらに大きくなる。現時点では、確認された規制の効果を嘉手納の範囲で捉えるべきだ。
日本市場との対照
BYDは国内メーカーが強い日本市場で販売拡大を目指している。日本の需要に合わせた新型車も発表し、小型の電気自動車を投入した。そうした事業展開と並行して、米中間の技術をめぐる対立が戦略拠点へのアクセスを左右している。米国の同盟国であり、中国メーカーにとっても市場である日本で、二つの動きが沖縄に交差した。
今回の禁止はBYD車の走行時の安全性を判断したものではなく、日本での販売許可にも、それだけで影響するものではない。対象は基地内の情報と任務の安全だ。この範囲を明確にしておかなければ、施設の入場管理が、車の所有者全体への非難にすり替わってしまう。
嘉手納の措置は、軍が今後すべての通信機能付き自動車に適用できる検証可能な基準をつくるのか、それともメーカーや生産国による禁止を続けるのかという問題も残す。当面の影響は明白だ。今週から、基地に入るための車選びそのものが軍の安全保障上の判断となった。



