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イルハン・オマル氏と「エルミ」の姓 裁判所の文書で分かること、まだ証明されていないこと

米検察当局は自宅捜索に関する文書で、下院議員を別の名前でも記した。FOXニュースは匿名の情報源をもとに出生時の名前だと報じたが、本人は否定する。捜査は実在する一方、公開文書だけで疑惑は確定しない。

2020年8月5日、ミネソタ州セントポールのイルハン・オマル米下院議員
2020年8月5日、米ミネソタ州セントポールのイルハン・オマル下院議員。 © 写真:Tony Webster flickr.com

「イルハン・オマル氏の本当の名前は何か」という問いが今週、再び広まった。米検察当局の提出文書が、ミネソタ州選出の下院議員を「Ilhan Nur Said Elmi、別名Ilhan Abdullahi Omar」と記していたためだ。この表現は実際の裁判所文書にある。しかし、なぜその名前を使ったのかを説明する記述も、出生証明書も、議員が身元を隠したとする結論も文書にはない。

この違いを見落とすことはできない。10月21日にワシントンの連邦裁判所へ提出された文書は、オマル氏が偽名を使ったと告発するものではない。報道機関や司法監視団体「Judicial Watch」が求める捜索令状関連資料の公開について、回答までの時間を延ばしてほしいという申請だ。検察側は令状の執行がまだ終わっていないと説明している。捜査員が裁判官にどのような証拠を示したかが分かる可能性のある資料は、封印されたままだ。

FOXニュースの主張と公開資料で確認できること

FOXニュースは木曜日、捜査を知る2人の関係者のうち、1人は法執行機関に関係する人物だとして、「Ilhan Nur Said Elmi」が議員の出生時の名前だと報じた。匿名の情報源による主張で、出生記録や独立した検証を可能にする公文書は記事に示されていない。報道後、オマル氏の広報担当者は同局に対し、この主張は誤りで、Ilhan Omarが本人の本当の名前だと答えた。

裁判所文書にある「別名」という表現は、検察側が二つの名前を捜査対象者に結びつけていることを示す。しかし、それだけでどちらが最初の公的な名前だったのか、いずれかが合法的に使われたのか、欺く意図があったのかは分からない。

一方、連邦捜査が行われていることは確認できる。捜査員は10月12日、令状を得てワシントンにあるオマル氏の自宅を捜索した。AP通信は事情を知る人物を引用し、家族に大陪審の召喚状が出されたと報道。ロイター通信は家族の移民関連書類を調べていると伝えた。司法省は捜索が進行中の刑事捜査の一部だと認めたが、根拠となる証拠は公表していない。本稿の時点で、オマル氏は犯罪で正式に起訴されていなかった。

ワシントン・ポスト紙によると、捜査当局は、家族が1990年代に難民として米国に来た際、オマル氏または父親が移民に関する情報を正しく申告したかを調べている。本人の年齢や父親の経歴も対象だという。ただし、これらは捜査に詳しい人々の説明であり、公開された起訴状の内容ではない。オマル氏は不正を否定している。裁判官が認めた捜索は証拠を探すための措置で、有罪判決でも、検察の最終判断を示すものでもない。

「エルミ」の姓が過去の疑惑を再燃させた理由

オマル氏は2009年から2017年の離婚まで、アハメド・ヌル・サイード・エルミ氏と法律上の婚姻関係にあった。ただし、離婚の数年前には別居していた。新たな文書に現れた姓は、この元夫の姓と一致する。政敵は長年、二人はきょうだいで、結婚は移民上の利益を得るためだったと主張してきた。オマル氏は否定している。

ミネアポリスのスター・トリビューン紙は2019年、公文書や婚姻記録などを調べた。結婚歴と税務申告には疑問点が見つかった。オマル氏はエルミ氏と法律上まだ婚姻中に、アハメド・ヒルシ氏と共同で確定申告しており、その不備を後に修正した。しかし、同紙の記者はエルミ氏が議員の兄弟なのか、確認も否定もできなかった。検証サイトのポリティファクトも同じ報道を調べ、血縁関係が立証されたとはしていない。

現在の捜査が初めての調査というわけでもない。ワシントン・ポスト紙は、第1次トランプ政権時代の2019年にオマル氏の移民記録を調べた元当局者に取材した。その説明によれば、当時の当局は本格的な捜査を始めるには材料が不足していると判断した。新しい証拠が現れる可能性を否定する経緯ではないが、繰り返される疑念と、検証可能な新事実は区別すべきだ。

オマル氏は、ソマリア内戦を逃れた多くの人々と同じく、出生証明書を持っていないと述べている。書類がないため通常の方法で個人情報を確かめにくいのは事実だが、それだけで申告が虚偽だとは言えない。疑惑を立証するには身元や当局に提出した資料について信頼できる記録に加え、食い違いが重要で意図的だったことを示す証拠が必要となる。話題のきっかけとなった3ページの文書から、そこまでは読み取れない。

11月3日の選挙で再選を目指すオマル氏は、自宅捜索は自分を威圧するためだと訴えている。政権側は移民法違反の可能性を調べているという。双方の主張は公の論争の一部だが、裁判の中で検証される証拠に代わるものではない。現時点で言えるのは、別の名前が公式文書に記されていること、捜査が進行中であること、オマル氏が偽りの身元で暮らしていたという説は公開資料では立証されていないことだ。

イルハン・オマル氏とは

オマル氏はソマリア生まれ。幼いころ、家族とともに内戦を逃れ、ケニアの難民キャンプで数年間を過ごした。1995年に米国へ渡り、その後ミネアポリスに定住。2000年に米国市民権を取得した。連邦議会に入る前は地域の教育活動やミネアポリスの地方行政に携わった。

ミネソタ州議会の議員を経て、2018年に同州第5選挙区から米下院議員に当選し、2019年1月から務めている。民主党の進歩派に属する政治家で、下院の公式経歴も「Ilhan Omar」と記し、予算委員会と教育・労働委員会での活動を挙げている。