ガルペリン氏の非公認伝記、メルカドリブレ経営陣が見方に異議
記者ハイロ・ストラッチャ氏の著書について、CEOの名が記された社内文書は、創業者も経営陣も取材に参加していないと説明し、作品の視点を批判した。

中南米のネット通販大手メルカドリブレの創業者、マルコス・ガルペリン氏の伝記が、会社の歩みを誰がどう語るのかという議論を伴って書店に並ぶ。ペンギン・ランダムハウス傘下のスダメリカーナが、記者ハイロ・ストラッチャ氏による非公認伝記『Galperin』を出版する。出版社の目録では電子版の発売日を2026年11月1日としている。
これに対し、2026年1月からメルカドリブレのグローバルCEOを務めるアリエル「アリ」・シャルフシュテイン(Ariel Szarfsztejn)氏の名が記された社内向けメッセージは、本から距離を置く姿勢を示した。同氏はブエノスアイレス大学で経済学を学び、米スタンフォード大学でMBAを取得。2017年に入社し、物流とネット通販の事業を率いた後、ガルペリン氏の後任としてCEOに就いた。
メッセージは、ガルペリン氏が取材に協力していないと説明し、匿名の情報源の使用に疑問を呈する。また、本の見方は創業者や会社の価値観を反映していないと主張する。
争点は二つある。取材への参加と情報源の扱い、そして本が示す政治的な解釈だ。出版社は、ガルペリン氏が事業を築き、中南米の公共的な議論でも存在感を増していった過程を調べた作品と紹介している。
社員向けメッセージは何を主張したか
メッセージの画像にはシャルフシュテイン氏の名前があり、冒頭でマルコス氏とメルカドリブレの非公認伝記が刊行されることを社員に知らせている。最初の主張は、創業者が制作に関与していないというものだ。「マルコスは本に参加せず、制作に向けて証言もしていない」と記されている。
文面によれば、同社の経営陣も取材に参加していない。そのため本の内容は創業者の意見や発言を代表するものではない、と説明する。さらに、氏名を明かしていない情報源の主張は会社側では確認できないとして、取材方法を批判した。
最も明確な異議は、作品の視点に向けられている。伝記は「イデオロギー的な視点」から書かれ、メルカドリブレとガルペリン氏の価値観を表していないという。ただし画像に写る文面は、どの出来事の記述が誤っていると考えるのかを列挙せず、特定の箇所への詳しい反論も示していない。著者の全体的な解釈への批判である。
結びでは、社員の日々の仕事が会社の歴史をつくるとたたえ、これからも共に歩もうと呼びかける。「最良の時はこれから来る」との前向きな言葉で終わる。創業者を擁護する文章は、社員に向けて会社の一体感を示すメッセージにもなっている。
本の内容と取材の方法
『Galperin』は、経済・ビジネス分野を取材してきたストラッチャ氏の初の著書だ。同氏は雑誌『Fortuna』で働き、『Perfil』の編集幹部も務めた。全320ページで、ペンギンの目録には紙版と電子版が掲載されている。電子版の発売予定日は11月1日だ。
著者はガルペリン氏の事業家としての経歴をたどる一方、政治的な発言力にも目を向ける。スダメリカーナの紹介文には、メルカドリブレと決済サービス「メルカドパゴ」の成長、米国での教育、アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領への支持、大手テクノロジー企業の経営者たちとの関係が挙げられている。
出版社のウェブサイトで読める序文にも、その視点が表れている。買い物や支払いに日常的に使われるサービスと、創業者がSNSで行う政治的発言を対比する構成だ。著者はこの関係を、取材を組み立てる軸の一つにしている。
ストラッチャ氏によると、取材と執筆には2年半を要した。謝辞からは、財務資料、SNSへの投稿、その他の文書を調べ、オンライン上の活動分析ではコンサルティング会社Ad hocの協力を得たことが分かる。報復を恐れて名前を伏せるよう求めた取材相手もいたと説明している。
ストラッチャ氏は、メディアCenitalの番組『540°』でも本について語った。同媒体が10月21日に公開した紹介文では、ガルペリン氏に近い多くの人に話を聞き、有益な情報を得たと述べている。23日にはInfobaeが、同氏とミレイ氏の関係や創業者の公的な立場を扱った本の抜粋を掲載した。
企業の歴史をめぐる見方の違い
メルカドリブレの成長によって、創業者の影響力は会社の日常的な経営の枠を超えた。ネット通販、物流、金融サービスを組み合わせた事業は中南米各国に広がり、出店者、消費者、競合企業にも影響する。ガルペリン氏の歩みを描くことは、その拡大を形づくった判断を検証することにもつながる。
会社の経営体制も変わった。2026年1月1日からガルペリン氏は取締役会のエグゼクティブ・チェアマンを務め、シャルフシュテイン氏がCEOに就いている。メルカドリブレが米証券取引委員会に提出した資料でも、この役割分担が確認できる。創業者は長期戦略に関わり、後任が日々の事業運営を率いる。
シャルフシュテイン氏の名が記されたメッセージは、社外から語られる物語に対して創業者と会社のイメージを一体のものとして守ろうとする。一方、本は同じ歴史を権力や思想という観点から捉えようとする。独立した取材による伝記と、経営陣が社員に伝えたい会社史の間に、解釈の隔たりがある。
マルコス・ガルペリン氏とは
マルコス・ガルペリン氏は1971年10月31日生まれのアルゼンチンの実業家。1994年に米ペンシルベニア大学ウォートン校を優等で卒業し、1999年にスタンフォード大学でMBAを取得した。メルカドリブレ創業前には、アルゼンチンの石油会社YPFで働き、ニューヨークのJ.P.モルガンでインターンを経験した。
1999年、スタンフォードに縁のあるエルナン・カサー氏やステレオ・トルダ氏らとメルカドリブレを創業した。売買プラットフォームは中南米に広がり、決済や物流のサービスを発展させた。2007年には米ナスダック市場に上場した。ガルペリン氏は2025年末までCEOを務め、2026年1月から取締役会のエグゼクティブ・チェアマンとして長期戦略に関わっている。